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「抵抗」「市場」など現代社会のテーマを写真と文章で深く切り込む雑誌『カラーズ』の出版、直近ではレバノンの歴史と文化をリサーチしてカタチにしてデザインギャラリーで販売するプロダクトデザイン、スカーフをとってタバコを吸う女性や外に散歩に連れていけない犬と生活を共にする男性など、外国人がその場に出かけても決して見えないイランの生の生活を写真集に収めた『イランの居間』(当然、イラン国内では禁書である)を出版した写真の部署など、どこのセクションもとても刺激的な活動をしている。しかも、どれも「深さ」がある。
もちろん40人の「生徒」をまとめ、世界のクリエイティブ最前線のビジネスに仕立て上げるプロのディレクターとコーディネーターが20人ほどいる。が、毎年更新する「スキルはあるが経験のない」クリエイターを束ねて高い水準のアウトプットをどうして維持できるのか。しかも、ここにはマニュアルなるものはない。あるのは1600年代の貴族の館と20世紀末にできた安藤忠雄設計の図書館を含む心地よい空間である。
一つヒントと思えることがある。アート、デザイン、音楽、歴史、社会学、料理…など関連ジャンルを網羅している図書館に「政治」や「国際関係」という項目の本棚はない。しかし、彼らの作品は決してリアルな政治から遠くない。いや、傍からみれば政治のコアに接近している。雑誌『カラーズ』のアート特集には北朝鮮の「将軍」の銅像の製作を一手に行っているアーティストが紹介されている。しかし、「政局」からは遠い。
彼らの現実へのアプローチには凄まじいものがある。