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ファブリカは毎月三桁の「入校希望者」から、特に政治や社会への意識や関心が高い人材を選んでとっているわけではない。が、社会をとてもシャープに切り取る。それがぼくにとって不思議だった。国連やユニセフなどとのコラボレーションが多いからか? 単にディレクターの志向なのか?
そうではない。ファブリカは目の前にあることをありのままに見るトレーニングをしているのではないか、とこの図書館の書棚を眺めながら思った。多様な文化を背景にしているメンバーたちとお互いのバイアスを落としあう。それもいわゆる「インターナショナルスタイル」「グローバル戦略」という名のブランドのためではない。メインストリームに媚びない。
ファブリカを理解する鍵は「オープンであることに対する執拗なまでの追求」ではないか。世界にある数多ある隙間にこそ見えてくる現実の威力は、閉じた目には見えない。オープンであることは結局において最強の武器である、ということをベネトンはよく分かっているから、このセンターの力を信じるに違いない。
生徒はファブリカでこういう「職業経験」をする。繰り返すが、ここは財団ではない。利益を追求する株式会社である。
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ローカリゼーションマップとは? 異文化市場を短期間で理解するためのアプローチ。ビジネス企画を前進させるための異文化の分かり方だが、異文化の対象は海外市場に限らず国内市場も含まれる。
安西洋之(あんざい ひろゆき) 上智大学文学部仏文科卒業。日本の自動車メーカーに勤務後、独立。ミラノ在住。ビジネスプランナーとしてデザインから文化論まで全方位で活動。現在、ローカリゼーションマップのビジネス化を図っている。著書に『ヨーロッパの目 日本の目 文化のリアリティを読み解く』 共著に『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか? 世界で売れる商品の異文化対応力』。ローカリゼーションマップのサイト(β版)とフェイスブックのページ ブログ「さまざまなデザイン」 Twitterは@anzaih