1964年の東京五輪のとき、日本が戦争に敗れて19年目だ。とにかく北海道から沖縄まで焦土と化して、食べるものもない時代から、五輪を一つの契機に東京や日本を造り替えた。新幹線や高速道路や都市計画、新しい日本をつくるために五輪は大きな役割を果たした。単にスポーツマンの集まりということではなくて、日本全体の底力を見せて日本を紹介するということと、世界は一つだということを見せる場だ。担当される人はそういう気構えでやってほしいし、五輪の一番の責任者である首相はそういうお気持ちで、『これから日本は世界を変えていくんだ』というお気持ちで五輪にあたってもらいたい。
実は私はこの7月14日で78歳になった。だから、五輪のことも心配だけど、五輪まで自分の体がもつかどうかと。最初は随分、そういう気持ちだった。案の定、この3月に肺がんであることがわかって、医者から『すぐ取れば大丈夫だよ』といわれて、取ってもらった。そして『何年持ちますか』と聞いたら、『まあ命があるまで持ちますよ』なんて言われたんだが、まあそういうものを持ちながら何とか頑張って、あとは足を少し強くして、五輪でスタンドに上がるときに手を引っ張って上がらなくてはならないようなことだけはしたくないなと思っている。