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“隙間ランチ”で親睦深める 「つっぱりポール」の平安伸銅工業
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部屋の角や天井の空間など、わずかな隙間にポールをはめ込み収納スペースに変身させる「つっぱりポール」で有名な平安伸銅工業(大阪市中央区)。そんな商品さながらに、同社はお昼時、社屋の「隙間」で宴会を開くというユニークな取り組みを始めた。狭い空間で膝をつき合わせて食事をすれば、自然に笑顔が生まれ、会話も弾む。社員同士の親睦を深めるのが目的だが、「新たなアイデア商品の開発につながるかも」との期待も芽生えつつある。
平日の午前11時、平安伸銅の本社オフィス。デスクとロッカーの間に敷かれたブルーシートの上で、社員たちが思い思いに食事を始めた。デスクとロッカーの「隙間」の幅はわずか1メートル程度。ここに14~15人が集まる様は、まさに“すし詰め”状態だ。
それでも仕事の話のほか、「中国出張のときに朝食べた小籠包がおいしかったんだよ」「子供が小学校のサッカークラブに入ったんだ」などプライベートな会話に花が咲く。アルコールなしの宴会は午後1時半まで続き、笑い声が絶えない。
この「室内すき間deランチ宴会」は昨年5月に始まり、これまでに計3回実施。東京支社と岐阜工場の担当者も本社に集まり会議をするときに合わせ、不定期で開催される。出前の釜飯やカツ丼などを囲む趣向だ。
提案したのは、創業家の3代目、笹井香予子専務を中心とする若手社員だった。「社員間のコミュニケーションをもっと活性化させたい」との思いが強かったという。
勤務年数が長い社員は、家庭のために定時に帰りたい。このため忘年会や送別会でもなければ、社員で集まって飲みに行くことはほとんどないとか。また、「少数精鋭のため個人で動くことも多くなりがちだ」(担当者)という。
このため「会議以外のオフの時間にも話をした方がいい」との声が社内から多く上がり、「終業後の懇談はだらだらと収拾がつかなくなることがあるが、ランチでアルコールを入れずに宴会をやれば効率的に親睦を深められる」(同)との理由から、ランチ宴会が始まった。
密接なランチならば社員の性格もよくわかるというもの。「まじめでおとなしい性格の社員が多いが、実はおしゃべり好き」(同)らしく、大いに話が弾むという。笹井康雄社長も参加し、プライベートの“秘話”などを披露して盛り上がっている。
平安伸銅はもともとアルミサッシの製造販売を手がけていたが、石油危機を境に生活雑貨メーカーへと転換。現在は国内で企画設計を行い、海外で製造委託するスタイルをとっている。商品の「開発力」が生命線だ。
このため、社員が日々頭をひねるのは「隙間やもてあます場所を、いかに効率よく整理収納できるようにするか」。
くしくもこのランチ宴会、日頃知恵を絞る対象の隙間に社員が入り込み、有効に活用しているのだ。平安伸銅の開発力をさらに飛躍させるきっかけになるかもしれない。
次回の第4回は2月21日に開催予定で、出前の選定を進めているところだ。若手の発案で始まったランチ宴会は、ベテラン社員たちも口に出さないものの「楽しみにしているようだ」(担当者)という。狭い隙間の活用が社員間の距離を縮めている。(中村智隆)
本社=大阪市中央区平野町1-6-8
設立=昭和28年
資本金=4900万円
事業内容=収納用品、家庭用品、物干しの販売など 売上高=非公表
従業員=24人