【書評】『与楽の飯 東大寺造仏所炊屋私記』澤田瞳子著 (1/2ページ)

2015.10.11 10:52

 ■「生きる糧」を照らし出す

 東大寺に安置されている「奈良の大仏(毘盧遮那仏(びるしゃなぶつ))」は、聖武天皇が発願(ほつがん)し、752(天平勝宝4)年に開眼供養が行われた。『与楽の飯』は、この国家的大事業に関わった者として、大仏鋳造の現場で働き、実際に造った人々に光を当てる。著者はこれまでにも『満つる月の如し 仏師・定朝』『若冲』といった小説を書いてきたが、本作は「創造行為」というものを、また別の側面から照らし出すものだといえる。

 物語は造仏所の仕丁(しちょう)(役夫)、真楯(またて)の目を通して描かれる。しかし主人公というべきは、造仏所の炊屋(かしきや)(食堂)でまかないに精を出す宮麻呂(みやまろ)である。この実直な炊頭(かしきがしら)(経営者兼料理長)は、現場で汗水をたらして働く者のために、日々の献立に工夫をこらす。ある日は、「干し葉を刻み込んだ菜飯に、鶏の油煮(揚げ物)、薑(はじかみ)(生姜(しょうが))入りの茸(きのこ)汁」で、仕丁たちの腹を満たし、舌を楽しませた。

宮麻呂が作る日々の飯こそが、まさに生きる糧

産経デジタルサービス

産経アプリスタ

アプリやスマホの情報・レビューが満載。オススメアプリやiPhone・Androidの使いこなし術も楽しめます。

産経オンライン英会話

90%以上の受講生が継続。ISO認証取得で安心品質のマンツーマン英会話が毎日受講できて月5980円!《体験2回無料》

サイクリスト

ツール・ド・フランスから自転車通勤、ロードバイク試乗記まで、サイクリングのあらゆる楽しみを届けます。

ソナエ

自分らしく人生を仕上げる終活情報を提供。お墓のご相談には「産経ソナエ終活センター」が親身に対応します。