しかし今後、ロシアがクリミア半島だけでなく、やはりロシア系住民が多いウクライナ東部でも軍事作戦を展開する事態となれば、先にウクライナの「主権と領土の一体性を支持する」と表明したNATOも、軍事介入の検討に踏み切るとみられる。
だが、NATOを実質的に束ねる米国では、米露の直接対決につながる米軍の軍事介入について、保守派の間でも「実行不能な選択肢」(ヘリテージ財団のスティーブン・ブッチ外交安全保障政策センター長)との見方が支配的だ。それ以前に、米国内の長期的な厭戦(えんせん)気分と国防予算の削減を背景に、オバマ大統領は「世界の警察官」という役割を放棄している。
オバマ政権は、NATOの枠組みで軍事力行使を検討する場合も、英仏などに作戦の主導権を実質的に委譲しておきながら「後方から指揮している」と言い張った、2011年のリビア空爆の時のような対応を繰り返す可能性もある。そうなれば、米国の指導力にさらなる疑問符がつけられるのは避けられない。(ワシントン 青木伸行/SANKEI EXPRESS)