故郷がなくなった
「あの日を境に、僕の故郷そのものがなくなってしまった」。1家7人で避難生活を送る会社員、竹本康則さん(46)はため息をついた。広島市安佐南区の緑井地区で被災。約10年前に建て替えたばかりの自宅は土砂で1階が壊れ、隣近所の家もほとんど原形がない。
「どれほど怖い土地に住んでいたか、やっと分かった。子供をここに縛ることはできない」。心は移住に傾いているが、転居資金はない。やむを得ず公営住宅への入居を申し込むという。「地区の復興に予算を投じても、戻らない人も大勢いる。個々の生活再建に回すべきだ」と行政に注文をつける。
今回の災害では、公営住宅に加え、国家公務員宿舎や民間の賃貸住宅を借り上げて無償提供することも決定した。広島市の松井一実市長は24日の記者会見で、公営住宅などの提供で足りない場合、仮設住宅を建設する考えを示した。
原則6カ月の制限
ただ、市営住宅と県営住宅の無償提供は、原則6カ月とされている。緑井地区の男性(81)は「半年後に戻れても、この年でローンなんて」とうめいた。自宅は土石流で流れてきた別の住宅につぶされた。