【KEY BOOK】「錯視の世界」(ジャック・ニニオ著、向井智子・鈴木光太郎訳/新曜社、4104円)
フランスの分子生物学者が遊んだ錯視感覚入門として、広く読まれてきた。全17章。かなり多めの錯視やだまし絵の図版を載せていて、どこからでも読める。説明もなかなかのウィットに富む。翻訳者が丹念に注釈を付けているのも嬉しい。しかし一冊を通して、錯視は結局「脳がだまされているんだ」ということを受け入れる必要がある。ニニオにそれを柔らかく説得されると、ま、いいか、そうだろうなと思えてくる。
【KEY BOOK】「視覚の冒険」(下條信輔著/産業図書、2484円)
ぼくの古い友人で、異才。早くからスタンフォード大学で実験心理学を研究している。「イリュージョンから認知科学へ」とサブタイトルにあるように、認知システムのモデルを幾つか使いながら、錯覚と錯視の究明の入口を説いた。ベラ・ユレシュの両眼視仮説の紹介がおもしろい。下條君には『サブリミナル・マインド』や『サブリミナル・インパクト』といった著書もあって、下意識や無意識と知覚意識との「あいだ」の研究が秀れている。こちらもどうぞ。