同じ空間に存在しているはずなのに、受け取る感覚が違えば、世界自体もまるで違うはず。
はからずも母の音痴は私に「人の数だけ世界がある」という概念を教えることとなったのです。
美しく完成された不可思議
昨年、私の読書生活において素晴らしい出合いとなった一冊に、『タラチネ・ドリーム・マイン』(雪舟えま著)があります。12篇の作品が収められたこの短編集を私に紹介してくれたのは、出身高校の図書局の皆さんでした。
この作品の大きな魅力であり、揺るがしがたい特色を、思いきって一言で言い表すならば、不可思議で独特な世界、でしょうか。
最初の短編「モンツンラとクロージョライ」からして、薄青い炎にしらしらと覆われている少女がいきなり登場します。他の作品にも、火星の地面に石で絵を描く女性、雨と同化する能力を持った女探偵、若返りの秘薬を使いつつ、宇宙船で暮らす女と、彼女の妹が出てくるのです。