けれども、それだけではない。川崎の描く登場人物は、その年齢や性別、ジャンルにかかわらず、いつだってつぶらな瞳を持つ童顔で、そのたたずまいは凛々(りり)しい。この永遠の若さを思わせるみずみずしさと、血の涙を流してもあきらめない怒濤(どとう)の地獄めぐりとの同居こそ、川崎のぼる最大の魅力なのではあるまいか。(美術批評家、多摩美術大学教授 椹木野衣(さわらぎ・のい)/SANKEI EXPRESS)
■さわらぎ・のい 同志社大を経て美術批評家。著書に、「日本美術全集19 拡張する戦後美術」(責任編集、小学館)、「戦争画とニッポン」(会田誠共著、講談社)、「アウトサイダー・アート入門」(幻冬舎新書)、「後美術論」(美術出版社)、「日本・現代・美術」(新潮社)、「シミュレーショニズム」(ちくま学芸文庫)ほか。多摩美術大学教授。
【ガイド】
■「川崎のぼる~汗と涙と笑いと~展」 10月12日まで、三鷹市美術ギャラリー(東京都三鷹市下連雀3の35の1、JR三鷹駅・南口前CORAL)。一般600円。月曜休館(ただし9月21日、10月12日は開館)、9月24日(木)は休館。(電)0422・79・0033。