祖国から離れてなお先を行く表現者　「オノ・ヨーコ　私の窓から」　椹木野衣 (5/6ページ)

　言葉と想像力という、最小限の要素だけからなるオノの作品は、うやうやしく美術館に保存されたどんな立派な過去の遺物よりも長く、２１世紀にまで生き延び、いつのまにか、オノとは縁もゆかりもないような多くの人々の支持まで集めていたのである。『私の窓から』と題された本展は、その意味では決して回顧展ではない。半世紀以上にわたるオノが、彼女に与えられた「窓」から見てきた世界観は、むしろこれから、その真価が試されようとしている。（美術批評家、多摩美術大学教授　椹木野衣（さわらぎ・のい）／ＳＡＮＫＥＩ　ＥＸＰＲＥＳＳ）

　■さわらぎ・のい　同志社大を経て美術批評家。著書に、「日本美術全集１９　拡張する戦後美術」（責任編集、小学館）、「戦争画とニッポン」（会田誠共著、講談社）、「アウトサイダー・アート入門」（幻冬舎新書）、「後美術論」（美術出版社）、「日本・現代・美術」（新潮社）、「シミュレーショニズム」（ちくま学芸文庫）ほか。多摩美術大学教授。

　【ガイド】

　■「オノ・ヨーコ　私の窓から」　来年２月１４日まで、東京都現代美術館（東京都江東区三好４の１の１）。月曜と１２月２８日～１月１日、１月１２日が休館。一般１２００円。（電）０３・５７７７・８６００。

椹木野依氏　吉田秀和賞受賞