祖国から離れてなお先を行く表現者　「オノ・ヨーコ　私の窓から」　椹木野衣 (6/6ページ)

　≪椹木氏　吉田秀和賞受賞≫

　本紙にアートクルーズを執筆している美術批評家で多摩美大教授の椹木野衣（さわらぎ・のい）氏（５３）が優れた芸術評論に与えられる吉田秀和賞（第２５回）を受賞し、１１月２０日、水戸芸術館（水戸市）で授賞式が行われた。

　受賞の対象となったのは、今年３月に発刊された評論「後美術論」（美術出版社）。

　椹木氏は本の冒頭部分で、“音楽と美術の結婚”ともいうべきジョン・レノンとオノ・ヨーコの出会いを取り上げ、２人のアーティストが互いに影響し合い、音楽にも美術にも属さない「後美術」を生み出したと指摘する。

　その後も世界中で、ロックや前衛アートなど音楽、美術両分野でジャンルの崩壊が起こり、分類不可能ともいうべきアートが次々生まれている状況を例を挙げながら一つ一つ論じている。

　賞では、椹木氏の「次時代の予言者のように兆しをくみ取る」（片山杜秀審査委員）鋭い先取性が高く評価された。椹木氏は受賞のあいさつで、オノ・ヨーコと１１年ぶりに再会したエピソードを交えながら、「吉田秀和氏の『ジョン・ケージ・ショック』が後美術論の生まれ故郷だったかもしれない」と述べた。（ＳＡＮＫＥＩ　ＥＸＰＲＥＳＳ）