【KEYBOOK】「或阿呆の一生・侏儒の言葉」(芥川龍之介著/角川文庫、596円、在庫なし)
昭和2年、芥川は自殺した。『歯車』『河童』『或阿呆の一生』『西方の人』、アフォリズム『侏儒の言葉』が遺った。なかでも『歯車』が多くを暗示する。「僕」はレインコートの幽霊、赤光、翼、黄色いタクシー、復讐の神などを身近に感じすぎて、東京の街を彷徨(ほうこう)した。そこに半透明の歯車がきらきらと見えてきた。帰宅してみると妻が「お父さんが死にそうな気がした」と言った。「僕の一生の中で最も恐ろしい経験だった」と結ばれる。(編集工学研究所所長・イシス編集学校校長 松岡正剛/SANKEI EXPRESS)
■まつおか・せいごう 編集工学研究所所長・イシス編集学校校長。岩波書店の『芥川龍之介全集 第6巻』の月報にエッセイ「出没する芥川」を寄稿している。故郷を訪れた時、鰤の照焼きを食す時、マリア観音や妖怪の話をする時といった至るところで、ふと芥川を思い出してしまう自身の体験を綴った。最新の千夜千冊:1595夜「ソウルダスト」(http://1000ya.isis.ne.jp/)