キヤノングローバル戦略研究所の山下一仁・研究主幹(寺河内美奈撮影)【拡大】
大和総研の熊谷亮丸チーフエコノミスト
政府が決めたTPP政策大綱は、関税削減などで海外産の輸入増加が見込まれる農林水産業を中心に、生産者の痛みを小さくする「守りの対策」に大きなウエートが置かれている。国別枠の輸入量に相当する政府備蓄米の買い入れ、牛・豚肉の所得補填拡充が盛り込まれ、生産者に向けた痛み止めの対策が目立つ。
「攻めの対策」としては、農地の大区画化や輸出促進策が打ち出されており、一定程度評価できる。だが目新しい対策が盛り込まれたわけではなく、攻めの農林水産業への転換に向けた構造改革は遅れている印象だ。改革の本丸ともいえるコメの減反政策廃止や、企業による農地取得の完全自由化といった取り組みは触れられていない。
政府が位置付けているようにTPPを成長戦略の切り札とするためには「岩盤規制」といわれる部分に踏み込んでいけるかどうかが今後の課題となる。国民に不人気で耳の痛い政策かもしれないが、規制改革を進めることが政権の使命だ。
TPPへの参加は非常に重要。スピード感を持って政策の具体的な検討や見直しを進める必要がある。(談)