【未来への伝言】葛西敬之・JR東海名誉会長(上)
■徹底的で合理的なプランを実行
JR東海にとって今年は大きな節目の年だ。経営を支える大黒柱の東海道新幹線が10月1日に開業50周年を迎え、早ければ今秋にも2027年の東京(品川)-名古屋間開業を目指すリニア中央新幹線の工事に着手する。葛西敬之名誉会長は旧国鉄時代、不可能ともいわれた分割民営化を内部で主導。JR東海では新幹線の収益性向上やリニアの推進に手腕を振るってきた。葛西氏は「リスクを取って、結果を出し、説明責任を果たすことが大事だ」と、次代を担う経営者にメッセージを贈る。
偶然に引かれたレール
《今春の叙勲で旭日大綬章を受章した。葛西氏は記者会見で『職業人生としては51年間、鉄道一筋でやってきた』と語った。だが、入社のきっかけはまさに偶然といえるものだった》
「大学4年時は複数の銀行から内定をもらい、当時は夏にあった国家公務員試験も受けようとしていた。あるとき、うっかり落としてしまった学生証や定期券が国鉄の荻窪駅に届いていると知り、取りに行ったら、駅の助役さんが『東大法学部だったら、国鉄ほど出世の早いところはない』と勧めてくれた。判断業務に早く携われるという意味で魅力を感じ、当時の国鉄からは政界や財界に転じた人もいて、将来の可能性も広がりそうだと思った。結局、試験を受けるのをやめて国鉄に入った。それがこの道を選んだ始まりだった。人生は偶然によって道が決まることも多い」