【書評】『知られざる文豪 直木三十五 病魔・借金・女性に苦しんだ「畸人」』 (1/2ページ)

2014.9.7 12:50

 ■「忙しい男」の生涯を詳細に

 今年は芥川・直木賞が150回を数える記念の年。それぞれに名を冠せられた芥川龍之介と直木三十五だが、その処遇には甚だしく差がある。芥川は岩波書店の全集をはじめ、各社文庫に定番として収録されるのに対し、今や、単独で流通する直木の著作はない。今年、没後80年のはずだが、顕彰する動きも聞かない。

 そもそも直木三十五とはどういう人物なのか。森鴎外研究で知られる近代文学研究者が、人物と作品について徹底的に調べ尽くした評伝が本著である。この昭和初期の流行作家については、血縁の植村鞆音(ともね)による『直木三十五伝』という浩瀚(こうかん)な評伝がすでにあるが、山崎は研究者らしく、作品を深く読み込むことで、「畸人(きじん)」の実像に迫ろうとしている。

 その43年の短い生涯をひと言で言うなら、やたらに「忙しい男」であった。大正期、自ら出版社を経営し、関東大震災後は大阪プラトン社で雑誌「苦楽」の編集に明け暮れる。夜は花街へ。「妻、妾、子2人」を自称した以外に、謎の女が見え隠れする女好きの方面でも「忙しい」。

作品より人生の方が面白過ぎるのが難点か

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