この原稿はアブダビの空港で書いている。ミラノからここまでの中東の航空会社の機内食やラウンジの食事をとりながら、スペイン料理に関する友人との会話を思い出し、香辛料のバリアは味より高いだろうか、ということを考えていた。
何事にも壁はつきものだ。越えやすい壁と越えにくい壁がある。言葉のニュアンスなども越えにくい壁の一つだ。ぼくが未だにしっくりこない欧州言語と日本語の差の例をあげよう。
友人に頼まれてモノを自宅のあるアパートに届けにいった時のこと。建物の入り口にあるインターホンで呼び出すと、「ありがとう。もし来たければ、エレベータを使って6階ね」と彼の声。
「他人のモノを頼んでいるのに自分が階下まで下りてこないで、上がってきたら?それも、来たかったら?こっちは好意できたんだぞ!」と即座に文句を言いたくなったが、もちろん、そんなことは即言わない。カチンときながら大人の対応をする。
「もしそうしたかったら」というのは、英語でいえば if you want だ。イタリア語でもフランス語でも、この言い方は非常に一般的で、日本語に直訳したニュアンスで理解してはいけないことは百も承知している。でありながら、どうしても日本語のロジックがムクムクと湧き上がってきてしまう。
ただ、この物言いに対する違和感は実は欧州人の間にあることも分かった。